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一ヶ月後のある日。
閉店後、カナメは師匠から話があると呼ばれた。
「カナメ、そろそろお前にも厨房入ってもらおうと思ってるんだ」
「えっ……、それって、あの……」
「ま、そうゆう事だ!」
「ほんとですか! ありがとうございます!」
「それでな、誰かオーダーやってくれる人を雇いたいと思ってるんだが、知り合いとかいるか?」
カナメの友達関係は暗かったが、先日バイトを首になった後輩を知っていた。顔はいいが、ガマンが足りない後輩だった。どうゆうわけかカナメにだけはなついていて、何かにつけて、頼って来ていた。あいつなら僕の言う通りに動いてくれるかも知れない。
「あの……、男でもいいですか?」
「もちろん。……むしろ大歓迎だ」
「え!……。師匠……。まさか、そっちなんじゃ……」
「だったら、どうする?」
「いえ……。彼が師匠好みかどうかは……ちょっと……」
「あははは。心配するな。わたしは女性が大好きだ!」
カナメは苦笑いしながら、ただ……、と続けた。
「ただ、なんだ?」
「ちょっと忍耐力不足ってゆうか、すぐにキレるんです。根はやさしくて、母親思いのいいやつなんですが……」
「どんなやつだろうとお客様に迷惑がかからなければ、問題ないよ。お前が仕込んでやればなんとかなるか?」
「ああ……、あんま自信はないですけど、取りあえず連れて来ますんで、面接してやってくれますか?」
「そうだな、今度の定休日に連れて来られるか?」
「わかりました」
――そして定休日。
カナメの後輩であるダイキは、実は料理に無関心ではなかった。母親と二人暮らしだったため、自分で夕食を作る事が多かったからだ。
「はじめまして、ダイキっていいます」
「君はこういった仕事は初めてかな?」
「ええ、まあ。でも高校ん時、たまにぱしりやってましたから、食べ物の記憶力には自信がありますよ」
シェフとカナメは失笑する。
「なるほど。それはいい経験をしたなー」
いやいや、よくはないだろ。
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