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シェフは、学校の先生が諭すかのように話始めた。
「よろしいですか? ここは小さいけれど、レストランです。うちのお店は7割くらいが女性のお客様です。君には細心の注意を払って頂かねばなりません。まずは身だしなみに態度。次に言葉使い。そして、絶対にキレてはいけません。何を言われても冷静に対応してもらわないと困ります。どうですか? がんばれますか?」
ダイキは思わずカナメを見る。
カナメは無言で頷く。
「俺……、今まで長続きした事ないから、あんま自信ないんすけど、先輩に見放されたくないんで、がんばりますよ」
「わかりました。カナメが厨房に入るまでの一ヶ月間、厳しくしますよ。君の一日は、店内掃除から始まり、店内掃除で終了します。サボったら即、首を覚悟してください」
ダイキは少々ビビり気味だったが、とにかくやって見るしかないと自分を奮い立たせた。
「では、早速明日からカナメの修業を受けて下さい」
「あ、ありがとうございます! よろしくお願いします!」
シェフは去り際にダイキの肩を叩きながら言った。
「最初に髪をなんとかして来てもわらないとね」
「は、はい……、わかりました」
ダイキは髪をかきあげながらシブシブ返事をした。
「よし! ダイキ! これから大まかな流れとメニューを頭に入れるよ!」
「先輩。俺、出来ますかね?」
「出来ますかね、じゃないよ! やるしかないでしょ! おまえさんだって、やれば出来るってとこをおふくろさんに見せてやらないと」
ダイキは母の事を持ち出され、目付きが変わる。
「オッシャ! 先輩とかあちゃんのためにも、俺、がんばるッス!」
「ダイキ……。自分のためにやってよ。自分自身と闘って欲しいんだ……」
「先輩……。先輩は何でいつもそんな優しい口調なんすか? ……つうか、だから好きになったんすけどね」
「――――!? すっ……」
「先輩って、昔からかわいいッスね~。でもホントは凄く強いってこと、ちゃんと知ってますから。だから俺、先輩について行きます!」
「そ、そうか……。じゃぁ、ついてきなさい……」
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