プロローグ

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しかしそんなわずかな幸せも目の前に現れた黒い影に遮られた。 「お前が滝沢か?」 女性の声だが低い声だった。 なにかに苛立っているのだろうか。 「そうですけど………」 「朝からダチが世話になったらしいな」 「なんのことですか?」 顔は見えないが、思わず敬語になってしまうくらい後ろにはオーラが見える 「とぼけてんじゃねーよ、今日かつあげやっただろっ」 なにをいってるんだろうか 「記憶にないんですが…」「むしろそんなことできな……」 「記憶にない?」「記憶にないほどやっているとしたら弁明の余地がないな」 怒り心頭で話を聞く余裕もないらしい。 「いや、だから……」 「問答無用!」「てめえみたいなゴミと話すのは無駄だ」 暗闇の中から顔に向かってなにかがとんでくる。どうやら拳だったらしい。 「なに勘違いしてんの!?」 右に避けた顔に向かってまた拳が襲ってくる。 ……ドスッ 顔にはなんとか当たらなかったが、肩に鈍い痛みがはしる。 こんなん相手にできるかよっ 背中を見せるのは危ないとも思ったが荷物を捨てて逃げるしかない。 ダッ……… 「おい、かかってこいよっ」 かなりのスピードで追い掛けてくる。 スーパーで買った荷物ももったいないが、命には変えられない いくらなんでも男のスピードにはついて来れないだろう。 「おい、待てって!」 なんでついて来れるんだよ!? このままだと捕まって、あの拳の餌食だ。 直線に街中へと走るだけでは逃げ切れない。 それに相手は自分を知っていた。今にげてれも家まで来てもおかしくはない。 相手の顔を確認しつつ逃げないと………。 暗かった路地からさっきのスーパーの明るい道にでた 人混みに紛れれば相手はわかるし、自分も少しは時間が稼げる。
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