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中庭の林の中で転入生の紀月アルトと会話し、そして王様である片桐央都となぜか熱いディープキスをしたその日から。
俺の生活は一変した。
「侑人」
「なんですか?央都」
「…なんでもない。呼んでみただけだ」
そう言って、少し紅潮した頬を隠すように視線を逸らし、目を伏せた彼は、俺の肩にその顔をうずめて、甘えるようにすり寄る。
その頭を柔らかく撫でれば、一瞬だけ身体を跳ねさせて、そのあと身体の力を抜いたように体重を掛けてきた。
「央都」
「なんだ」
「…可愛い」
「…! おっ、俺が可愛い?!」
驚いたように。しかし嬉しそうにする彼を見て、これが俗に言うツンデレか?と思いながらも愛しさは増していく。
「可愛いですよ、央都。俺だけの王様…、」
腕の中の彼を強く抱きしめて、顔を上げた彼に少しずつ顔を寄せる。すると期待するように目をつむるものだから、可愛いともう一度口の中で呟いて、そして…――――
「侑人先輩っ、朝ですよ!」
「――アルト」
「…あれ、ちょ、なんで怒ってるんですか?ねぇ、その手に持った目覚まし時計をどうする気ですか侑人先輩!?」
「認めたくはないが俺はさっきまで最高に幸せな夢を見ていた。それが打ち切られたのはお前の声があったからだ。――…俺の怒りを受け入れろ」
「そんな理不尽なっ!」
俺の幸せな夢は、同室者の紀月アルトのおかげで、終わりを告げたのだ。
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