9人が本棚に入れています
本棚に追加
朝も早かった為に、二度寝しようと布団に再度潜り込んでも、頭が重くて体がダルいだけで、一向に寝付けなかった。
日が完全に昇って、ワタシは彼と近くの大学へ行った。
相談の為に保健の先生と進路の相談をするらしい。
ワタシまで呼ばれた意味が解らなかったけれど、彼なりに考えてのことだと黙ってついていった。
初対面の女の先生とは、やはり上手くしゃべれなかった。とりあえず、中身のない会話だったということは覚えている。
彼女なりの心配だったのだろうが、結局は本意は聞けなかった。
ワタシの中にいる子供のせいで、彼が大学を辞めようとしているのをやはり快く思っていなかったようで、奨学金制度の話を聞いてとりあえずその場は終わった。
「また来てね。」とは言われたが、ワタシはもう会おうとは思わなかった。
数日後、夕刻。
ワタシは彼の家にいた。
ご報告、というやつだ。
「お話があります。」と、彼が両親に時間を作ってくれるよう言ったらしい。
彼の両親は、既に内容に気付いたらしく、複雑な顔をしていた。
その表情は、知っていた。母がワタシを怒るとき、いつもそう言う顔をしているから。
言うことは、決まっている。
何ヲ言ッテモ無駄ナ顔。
ワタシは瞬時に、諦めた。
期待したワタシがバカだった。
彼は大学生。しかもそれなりに良いとこの家の長男。いつか将来、家を次ぐ人。
ワタシは自分の考えの浅はかさと愚行に後悔した。
と、同時に 絶望した。
子供を卸すのは、二回目だった。
一回目は同年6月、しかも父親は同じ人。
一回目は、諦めた。
彼にだけ話して、こっそりと卸した。名前だけ付けて、何度も謝って、一人で悩んだ。
心と身体を襲った喪失感と、後悔とで、ワタシは彼を求めて、また過ちを犯した。
その結果が、コレだった。
最初のコメントを投稿しよう!