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隣に居る彼を見ると、泣いていた。 だけどワタシは、ソレの涙を冷めた目で見ていた。 彼は、自分のために泣いていた。 自分のこれまでの行い、考えの浅はかさ、親がどれだけ自分に期待してくれているか。 ワタシの為の涙はない。 ワタシの中に居る命への涙はない。 途端に、どうでもよくなって笑えてきた。 そこで、彼の父親から出た発言にも、笑えてきた。 「アンタの名前も、家のことも、なんも知らないし」 よく小説やらで読んだ覚えのある、有りがちな常套句だなと思った。 鼻で笑いそうになって、抑えた。 あくまでしおらしく、はい、とだけ答え続けて、最期には「それで、どうするんだ?」と聞かれたときには、ワタシは静かに笑っていた。 壊れた空っぽな笑顔だった。 ワタシの顔を見て、彼の両親は何を思っただろう。 彼の両親の目を真っ直ぐ見て、笑って「卸します」と言ったワタシの目を見て、一瞬、彼の両親は、確かに、ワタシに怯えた様な顔をした。 すぐに笑顔に戻っていたけれど。 そのあとすぐに、追い討ちをかけるように彼のお婆様と話をするよう言われて、ワタシは彼のお婆様にも同じように話した。卸しますとも、すぐに伝えた。 帰宅して、ワタシは虚無感に包まれた。
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