イチ

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どうやら未だに頭が混乱している様で、どこに袋を忘れてきたのか思い出せない。 客間にはなかった。 記憶を呼び起こそうとしていると、浴室の方からまたワタシを呼ぶ声がした。 急いで階段を降りて浴室に向かう。 すると、いつの間にか妹が風呂から上がっていて、脱衣所で小さな袋を開けて中身を凝視していた。 一瞬、「しまった」と思った。 しばらくそれをまじまじと見ていた妹は、ワタシに気が付いて視線を寄越すと、 「ひろみちゃん、色水、こぼしちゃったの?」 と聞いてきた。 その一言を聞いて、そういえば最近、保育園で水を入れた袋にアサガオの花を入れて潰して、水に色を付けるという遊びが流行っていると、妹が楽しそうに話していたのを思い出す。 再びボーッとしだしたワタシに妹は「ひろみちゃん?」とワタシの名を呼ぶと、ワタシはソレに「そうだよ。」と返した。
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