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僕の席は教室の一番後ろにあり、かつ、窓際にあったから、その影に気づいたのは僕だけだった。あるいは、気づいていても、どうでもいい些細なことだと決めつけているのか。とにかく、クラスは談笑を続けた。
僕は些細なことだとは思った。けれど、どうしようもなく暇だった。僕は席を立ち、窓越しに下を確認しようと試みた。ちょうど、解けない問題の答えをのぞき見するくらいの軽い気持ちで。
教室は三階に位置していたから、ガラスが邪魔で真下は見えなかった。元は軽い気持ちだったけれど、そうなると、余計に気になりだしてしまうのはしかたのないことだと思う。
窓を開けた。冬の冷たい風が、一気に流れ込んできた。寒いぞ、と文句が出る前にさっさと用を済ませてしまおうと、僕は身を乗り出した。
そこにはなにもないはずだった。「なんだ、やっぱりカラスかなにかだったのか」と納得する気でいた僕は、眉間にシワをよせ、目を細めて、注意深く、地面に横たわるソレを、今度は睨むようにして、見た。
目を開ける。回想に浸っている間、僕は、夢だろう、幻想だろう、と祈っていたけれど、叶わずに、まだ、ソレはソコにある。
遠くから、はやく閉めろよ、という声が聞こえた。それが自分に向けられたものだと理解するには時間がかかった。しかし、理解してなお、体は反応しなかった。
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