はじめての彼女

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今岡さんとの交際が二週間を過ぎたころ、突然、彼女は僕の家に行きたいと言った。 ついにあれをこーしてあーしてそんでもってこーすることができるのか、と高まる期待に胸を踊らせながら、僕は平生と変わらないテンションで「ん」と承諾した。 この二週間、僕たちの交際はプラトニックなものだった。いや、それとは少し違う気がするけれど、とにかく、大変に清らかなものだった。 交際を開始するきっかけというのが僕の下心だった以上、交際は清らかなものにしなければ、僕のプライドが許さなかった。なんたって、オイラはクールビューティ☆を目指している。クールビューティ☆は下心を表に出さないものである、と定義しているのだ。 交際をする以上、互いの連絡先を交換し、毎日数件のメールを交わした。登下校はできる限りいっしょにした。それなのに彼女について知っていることはまだ少ない。 プラトニックというより幼稚なだけかもしれない。だって僕らは別段愛し合っているわけじゃないし、した会話といえば好きなものとか、そういう、ほんと、どうでもいいものばかり。 好きな食べ物やら本やらマンガやら映画やら音楽やらを知ったところで、いったい何の役に立つのだろうか。唯一役に立つ情報といえば、それがなにに役に立つかはわからないけれど、彼女が処女だろう、ということくらいのものである。  
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