縛る

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現代文の授業が終わったあとは、一日の学校生活の締めである清掃だった。 僕の担当場所は職員室だったけれど、入り口の扉に掛かっていた「生徒入室禁止」の札を理由にサボりを決め込んで、校内をうろついた。 とりあえず、栗林がいたはずの屋上に向かった。当然、そこにつながる扉にはカギが掛かっていたから、すぐに諦めて、でも行くところなんて別にないから、気の向くままに歩いた。 あちこちで栗林の話をしていた。その中の、特に一年生は、興奮した様子だった。死んだ、と決めつけているやつもいて、少し、むっとした。けど、しかたないよな、とすぐに思い直した。 テレビで報道された事故が、たまたま近所で起きたことだった、みたいな感覚なのだろう。だとしたら、わからないでもない。僕も、名前も知らないようなやつが死んだところで、馬鹿じゃん、と鼻で笑うだけだから。 頃合いに教室に戻り、それからしばらくすると、副担任の澤先生が慌ただしく入ってきて、「ホームルーム始めて」と言った。 室長の号令で、僕たちはけだるそうに、お願いしますと挨拶をした。室長――僕たちの学校では、クラスのおさのことをそう呼んでいる。 澤先生は、明日の時間割に変更があることや、進路希望調査の書類の提出期限が明後日までであること、また、部活動をしている人で帰りが遅い人は、暗いので十分に注意すること、などを、休みなくしゃべり続けた。でも、栗林のことには触れなかった。 そして、最後に、「以上です。終わって」とでも付け加えようとしたんだろう。でも、「終わ」を言ったところで、山崎の声に遮られた。
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