縛る

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「せんせぇ」 先生を呼ぶときは、いつもこう。しまりがなくて、だらしない。僕はその度に、馬鹿じゃねーの、こいつ、と思ってしまう。冷静であるときの僕から見れば、馬鹿なのは僕であることなんてすぐにわかるのに、どうも、いざそうなると。 「質問いいッスかあ? いっこ」 とにかく、このだらしないしゃべりは人を不愉快にさせる。でも、まあ、そこはさすが教師というべきか、澤先生は一瞬ムッとした顔をしたけど、すぐに繕って、「なんだ」と返した。 「栗林。あいつ、どうなったんスか?」 すごんではいなかったけど、間延びもしていなかった。いつものふざけた様子は感じられなくて、逆に迫力があった。さっきまでとのギャップで余計に。 みんな、息を呑んだ。でも、迫力のせいではない。不意をつかれたのだ。 「その件か……」澤先生は顔をしかめて、下を向き、なにやら考えたあと、顔をあげた。「先生たちも、あまり状況が掴めていないんだ。正確な情報が入ったら、お前たちにも必ず連絡するから……」 「そうッスか。……、いっこって約束ですからね、まあ、了解ッス」 山崎の声は風船みたいにしぼんでいって、最後のほうは何と言っているのか、ほぼわからなかった。  
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