縛る

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学校が終わる。三時半。今日が月曜日なら、これから補習。帰りは四時半になる。でも大丈夫。今日は火曜日だ。 帰宅部――と僕たちはどこの部活動にも参加していない生徒のことをそう呼んでいるけど、僕はこれだから、もう帰宅。さすが、帰宅部。 今岡さんも帰宅部。僕と付き合い出す前まではバレー部だったけれど、僕といっしょに帰りたいから、という理由で、あっさり辞めた。 なんというか、浅ましい。押し付けがましくもある。そんな恋の形は歪んでいる。悪霊のような執念深さを感じ、いつかなにかの拍子に、その愛情が憎悪に変わってしまうのではないかと思ってしまう。 そのとき――今岡さんは僕のこの無防備な背中や腹に包丁やら何やらを刺しにかかる。痛みに悶えながら、今岡さんの笑い声が耳の奥で反響し、でもそれらは徐々に薄れていく。やがて、僕は死ぬ。 今岡さんから部活を辞めた理由を聞いたとき、僕は、一瞬でそこまで妄想した。ありえない想像ではあるけど、僕にとって、今岡さんの行動は褒められたものではなかったことは確かだ。 当時の僕が、いっしょに帰るという今岡さんの提案を認めた理由は、おそらくは、断ったらどうなるかわからない、という恐怖だろうと思うけど、どうだろう。二ヶ月も経っていない頃のことなのに、あまり覚えていない。  
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