縛る

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そんな僕たちは、今日もいっしょに下校した。僕の家まで歩いて十分の、短い時間。 当然のように、話題は栗林のことになった。 「栗林くんって、変わった人だったよね、あんまり知らないけど」 だった――という言い方に腹が立ち、知らないなら語るなよと言ってしまいたかったけど、じゃあ、裕紀くんはどんなことを知ってるの? と訊かれたら返す言葉がない。僕の負けだ。 「ちょっとは知ってるの?」 曖昧に、僕は訊く。 たしか、栗林の話では、今岡さんと栗林にたいした接点はなかったはずだ。 「……、裕紀くんの、友達、でしょ?」 言葉に詰まった。なんと答えればいいのかわからなくて、濁すように、まあ、とだけ息を吐いた。それが今岡さんの耳に届いたかはわからないけど、彼女はそれ以上追求することなく、 「だから、顔くらいわかるよ? 声も。……それくらいだけど、なんか、滲み出てたじゃん。……変人オーラ、みたいなのが」と続けた。 僕に友達かどうかの質問をしたわけではなかったのだ、と後で気がついて、僕は自嘲した。 猫が鳴いた。 いつの間にか世間話をしている今岡さんを見つめる。以前、僕がしたマイナスの妄想は、やはり、現実の彼女に当てはまらない。  
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