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「約束と違う」
ひとしきり後悔したあと、僕の喉を通った声は、ひどくかすれていた。
ベッドの端に腰かけて足をぷらんぷらんしていた僕の彼女、今岡さんはその声に反応してか、ぷらんぷらんを止めた。
「約束と違う!」
今度は、声が裏返って、こめかみがキンと突っ張った。ほとんど無意識だった。すぐにそれに気がついて、クールビューティ☆と掛け離れた自分の行動に落胆した。
一瞬、彼女がビクついた気がしたけれど、彼女はすぐに「約束ってなに?」と、怒った顔を見せた。
うっ、と僕は言葉に詰まった。これから言おうとした言葉は、およそクールビューティ☆のそれとは掛け離れたものであった。
そういうわけで、しばらく僕がなにも言えないでいると、彼女はこう続けた。
「むっつりスケベ」
ああ、むっつりだけならばまだ救いがあったのに。口数が少ない、つまりは、クールビューティ☆な男である、と捉えることもできたのに。
僕の中で、なにかがキレる音がしたのはこのときだった。
それからのことはあまり覚えていない。
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