はじめての彼女

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はじめて聞いたときは、そりゃあもう驚いた。なにが起きたのかわからなくて聞き返しもした。けれど、同じ口調できっぱりと、とても聞きやすい声色で、「結婚して」と言う彼女、今岡奈々、たぶん十六歳。 もちろん拒否した。それは無理だ、と。 すると彼女は、「悪いことしたと思ってる?」と言い、僕が頷くと、「それで、責任とってくれるの?」と続け、 そんなこと言われたら、「はい、許してくださるのなら、何でもします(結婚は除く)」としか答えられない僕、望月裕紀、十六歳。 先生! これが誘導尋問というやつですか! 日が暮れはじめた。最初は彼女が結婚と言った回数を数える余裕があったけれど、三十回辺りでもうやめた。正座を長時間したために、足の感覚はとうの昔に消え失せた。そうして体感で「結婚」が百回を越えたとき、 「結婚とか、軽々しく言うなよ」 ついに僕は言ってしまった。 すぐに彼女は言う。 「軽々しくなんて言ってない!」 やばい、のまれた。と思った。これじゃあ、きっと、彼女の思う壷。 おそらく、彼女は僕が逆らうのを待っていた。そうすることによって、僕をとことん悪者にして、それでもって、想像もできないような恐ろしい命令を、僕にするに違いない。 「だって、私、裕紀くんのためならなんだってできるもん!」
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