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「ん、乗れよ」
「うん」
わたしは藤岡の自転車の後ろに乗った。
「重いよね?ごめんね」
「ははっ山田、昔と同じこと言ってる」
「…覚えてんの?」
「当たり前。山田とはじめて喋った日のことじゃん」
「…そうだっけ」
「うん」
ほんとは覚えてる。
忘れたことなんかない。
嬉しい。
嬉しい嬉しい嬉しい。
ずっと、わたしだけなんだと思ってた。
あの日のこと、覚えてるのは。
でも…藤岡も覚えてた。
わたしにとっては、特別な日だったけど藤岡にとっては、いつもと変わらない日。
だから、わたしとはじめて喋った日のことなんて忘れてるんだと思ってた。
「…藤岡」
「ん?」
「藤岡とはじめて会った日から、もう一年たつね」
「だなー。あん時も今ぐらい暑かったよなー」
「具合悪くなるくらいね」
「そうだったなー。おまえ、あん時すっげ顔色悪くて俺焦ったわー」
「藤岡、あん時はありがとね」
「今更だし。ほら、着いたぜ」
気付いたらもうゲーセンに着いていた。
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