372人が本棚に入れています
本棚に追加
よ、よし。俺も食べてみたいし、お言葉に甘えてしまおう。
「あ、あ~ん」
ぎこちない動きで俺は口を開けていつでもウェルカム状態。
そしてアスカは笑顔のままケーキを俺の口に――
「あ~~ん。う~ん、おいしいっ」
あれ? おかしいな。ケーキが俺の目の前でUターンしてアスカの口に吸い込まれてしまった。
「だ、だましたな!?」
これは酷い! 悪魔のような女だ。
「アスカちゃん。レイくんがかわいそうだよ」
涙を噛み締める俺をアスカはバカを見るように笑った。
こうやって人の心は廃れていくんだな。なんか以前にもこんなことがあったような気がするよ。
「アスカちゃんがあげないなら私があげるよ」
今度はサラがケーキを差し出してきた。
「い、いいのか?」
「うんっ。レイくんにはお世話になってるから」
無邪気なかわいらしい笑顔で嬉しいことを言ってくれる。なぜかサラの猫耳はせわしなくピロピロし、尻尾はゆったり動いている。
「じゃ、今度こそ……」
「レイくん、あーん」
「あ~……――」
「やっぱりやーめたっ!」
悪夢再来。お宝はサラの口へと運ばれてしまった。
もう帰っていいかな、俺……。
最初のコメントを投稿しよう!