―始動―

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 俺もケーキを食べようかと前を向いたが、その客とキャサリンさんの会話がなぜか耳に入ってきた。 『聞いたぜキャサリン。パドリアで一発かましたらしいじゃねーか』 『それなら、俺も聞いた! その怪我もそん時やったんだろ? 大丈夫かよ?』 『たいしたことないわよ。ちょっとトラブルがあっただけ。心配してくれてありがとっ。いつものでいい?』  男性客二人は、あぁ、と答える。  パドリアか。授業でもやったな。たしか、セイレーンから西の方にあって、エルフが大勢集まって出来た小さな国だとか。  争いが全くと言っていいほど無くて平和な国らしい。  その反面、争いがないがために国を守る軍の実践経験が足りず、万が一に戦争が起こったら一番危ない国だとか。  まぁ歴史から見ても、大きな戦争があったのはもう何百年も前の話で、いまの時代戦争なんて起こる気配すらない。 というのがいまのルーンだ。  世界的に見てもルーンは平和なのだ。  俺がそんな風に考えていると、左側の席がガタッと鳴った。  立ち上がったサラだった。 「サラ?」  俺とアスカも食べるのを中断してサラを見る。  先程まで幸せそうにケーキを食べていたのに、驚愕の表情を浮かべて男性客の方を見ていた。
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