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「つれねぇなぁ」
とケイトは苦笑しながらもリザの横へと腰を下ろした。
少しムッとするリザだったがそのままなにも言わなかった。
波のない湖から流れる涼しい風が二人の隙間を通り抜ける中、ケイトは早速切り出した。
「んで? どうしたんだよ」
「は? なにが」
イラついているのかリザの声色には若干のトゲがある。
おぉ怖ぇ、とふざけながらケイトは続ける。
「みんな心配してんだぞ。リザの様子がおかしいってな」
「私はいつもこんなだ」
「俺から見てもいつも通りには見えねぇな」
「ケイトが普段見ている私がすべてだと思うな」
「そりゃごもっともで」
さすがと言うべきか否か。一向に尻尾を見せない。意外と頑固なリザはなかなかの強敵だ。
「うーむ。当ててやろうか」
「――ッ!」
ポニーテールがピクリと揺れた。
いつかのセリフ。リザにとって忘れようがない、魔法の言葉だ。
本当に当てられそうで、リザは内心冷静ではいられなかった。
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