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「ふんっ。私の頭の中を読めるならやってみろ」
それでもリザは強気を貫く。理由はわからないが、弱音を見せたくなかった。
プイッと背けられたリザの横顔をケイトは凝視する。
ジ……っと、ネズミを狙う蛇のように、その視線は一向に動こうとしたない。
さすがのリザも、だんだんと恥ずかしくなってきてしまう。こんなにも長い時間、誰かに見詰められることなどなかなかない。
「い、いつまで見てる」
我慢できずに照れを隠すように睨み付ける。
「ん~。いやまさかな……。リザに限ってそんなわけ……」
怯むどころかケイトの独り言が流れた。
「なにぶつぶつ言っている」
「変なことだけど、聞いていいか?」
まるで会話のキャッチボールになっていなかった、が、ケイトにふざけている様子は微塵もなかった。
「な、なんだ」
リザは睨み付ける攻撃を継続しながら答える。
一方ケイトは眉間にシワを寄せ、ちょっと不満げに見える。
「あの……なんだ。俺がとやかく言うことじゃないんだが――。好きな人ができたのか?」
その質問はリザの予想を、はるか上空のさらに上を行くものだった。
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