―罪―

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リザにはそれ以上を口にすることはできなかった。 弱さを見せた、強さも見せた。ただ、これだけは己から見せることはできない。 ある者から見たら、アホらしい、と笑われるかもしれない。 しかしこれは彼女の〝決まり(ルール)〟なのだ。何人たりとも侵すことのできない聖域だ。 一方ケイトは困り果てていた。言葉を理解できても、それがなんと言わんとしているのか理解できない。 誰よりもリザを理解し、支え、共に時間を過ごした。 〝全てを知らない〟 そりゃそうだ、とケイトは思う。 どれだけ親密になろうとも所詮は他人。中身全てを見ることなど到底不可能に決まっている。 しかし、目の前で必死に見つめる彼女はその不可能をやってのけろと言うのだ。 無理――とは言いたくない。最初から諦めるのには早すぎる。 だが、〝出来る〟と〝出来ない〟の境界線は必ずある。 少女は相も変わらずそのまま。嵐が来ようが待ち続けそうにも関わらず、ひと度風が吹けば消えてしまいそうな表情。 はてどうしたものか、と呑気にも彼女に対する答えを探す中、この止まった時間を叩き壊すモノが現れた。 「ケイトー、リザー? どこにいるのよー」 林の向こうから二人を呼ぶ声がした。
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