最高の女

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その時玄関のチャイムが鳴って、来客を告げる。 矢城が死んでからの二つ目の変化。 …俺は、カヨと出逢った。 「大沢香葉子です」 出逢いの場で、カヨはそう言ってはにかんだ控え目な笑顔を浮かべて会釈した。 『会ったことがある』 何となく、誰かに似ている。 何よりも先にそう感じた。 何処かで、何か大事な場面を共有したことのあるような、そんな印象を真っ先に受けた。 勿論そんなはずはない。 ただ大沢香葉子は、俺が無条件で受け入れやすい顔立ちだった。 飛び抜けて美人とか可愛いというのではないが、色白の肌や、ふっくらした頬、少しだけ垂れ目な、笑うときと泣き出す直前が同じ表情になるような目元。 すぐに返事をしなかった俺に、カヨは戸惑ったように細い首を僅かに傾げた。
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