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「先輩はいいですよね。堂々としてて」
玩んだ蛸わさびをようやく口に入れてから
矢城が上目遣いに俺を見た。
空になったグラス2つに、
烏龍茶割りを作る。
こいつのは薄めにしてやった。
「なにがだよ」
「だってね」
余裕綽々じゃないですかぁ。
「だからなにがだよ」
女だ。
きっとそんな話だ。
前回の、
「彼女は運命の彼女じゃありませんでした」
から、
次の報告はまだ聞いていない。
こいつはコンパやら
キャバクラやら
お見合いパーティーなるものまで、
赤い糸を手繰ることに余念がないのだ。
女が途切れて4ヶ月くらい経つのは珍しいことで、
こいつは今夜始めから悄気ていた。
「先輩は別に、シングルライフ平気なんでしょう」
平気と言うか。
「無理矢理作ろうとは思わないだけだよ」
矢城はふんと笑ってから眉を下げる。
泣き笑いみたいで
可笑しかった。
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