story-01

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「胡桃ちゃん、お疲れ様」 「お疲れぃ」 「来週から制服を着るんだね」 「楽しみだね」 私は葉山胡桃。 高校時代からの夢を叶えるべく、CAの卵として訓練に明け暮れる毎日。 訓練生は学ぶことが多く、ぶっちゃけ学生の時よりも勉強していると思う。 大空に飛び立つ夢のためなら、どんな訓練もパスしてみせる。 その時はそう思っていたのにね…。 「胡桃ちゃん、明日はカズが駅に迎えに行くって」 「大丈夫。歩いて行くよ」 「胡桃ちゃんとお話ししたいんだって」 「私と?」 「お兄ちゃんの思い出でしょ。聞いてあげてよ」 「おーけー」 訓練が終わって駅へ向かう道。 いつも親友の桃香と一緒なんだ。 彼女とは10年以上の腐れ縁。 小学生の頃の私は宝塚を目指していた。 バレエ教室で出会った桃香は、その頃から可愛かったんだよね。 桃香は娘役で私は男役志望。 そんな二人だったのに、夢は宝塚から大空へと変わっていっちゃった。 今は共にCA訓練生。 人生なんて、どう転ぶかわかんないね。 ホント。 どう転ぶかね…。 「お兄ちゃんは、胡桃ちゃんが好きだったと思うんだ」 「それはナイでしょ」 「胡桃ちゃんは?お兄ちゃんのことどう思ってた?」 「好きだったよ」 初恋だもん。 誰にも言わないけどね。 「そうなんだ!お兄ちゃんに報告しなきゃね」 桃香のはしゃぐ顔に、あの頃の面影が見える。 楽しかったなぁ。 桃香の“お兄ちゃん”は私の初恋の人。 宝塚しか見えていなかった生意気な私に、優しい風を運んでくれた人なんだ。 「桃香。潤くんって優しかったね」 「そうかな?私には俺様だったよ」 「妹だからでしょ」 彼は、潤くんは、心のあったかい人だった。 もう一度…会いたいな。  
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