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「胡桃ちゃん、カズが家まで送っていくって」
「駅まで歩いて10分でしょ。電車で帰るよ」
一也さんに送ってもらったら、潤くんの話題になる。
今日は避けたい気分。
「それじゃあ駅まで一緒にいこ。買い物したいの」
「何買うの?」
「アップルパイ」
「ダイエットの敵だよ」
「いーの」
ダイエットが趣味みたいな桃香がアップルパイって?
そんなに美味しいのかしらね。
「パステルに行くんだな。潤くんが好きだったアップルパイだろ」
「カズは私よりもお兄ちゃんのこと知ってるよね」
「ずっと一緒にいたからな」
アップルパイか。
潤くんの思い出って言われると、ちょっぴり気になる。
「私も買って帰ろうかな」
「美味しいよ~」
「そんなにぃ?」
「ホッペが落ちるわよ」
“ホッペが落ちる”って、久しぶりに聞いたわ。
そんなところが桃香らしい。
一也さんは、ちゃんと分かっているみたいだね。
羨ましいなぁ。
「アップルパイは美味いけど、オヤジがボーっとしてるんだよね」
「オヤジって失礼でしょ。カズの1つ上なんでしょ」
「昔からオヤジくさかったんだぜ。まあ、年々若くなっているような気がするけどね」
「私もそう思う!」
「だろ?」
なんだかね。
イチャイチャしてくれちゃってるわ。
それにしても“オヤジ”って。
実際に会ったら、オヤジだった。
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