勇者と魔王

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B;ふっふっふ。よくぞここまで来たな、勇者よ。 A;ついに追い詰めたぞ! 覚悟しろ、魔王! B;まあ待て。おぬし、世界が欲しくはないか? もしワシの仲間になれば、おぬしに世界の半分をやろう。 A;いやだ! B;なぜだ。 A;半分っていうのがいやだ! B;なに? まさか世界がまるごと欲しいと? 欲張りな奴だな。 A;違う! 半分って言葉がいやだ! B;なぜだ。 A;あれは僕が8歳の時だった。兄とメロンパンを半分こした時、兄はメロンパンを上と下で半分にして、パンだけの下の部分を僕に寄越したんだ! あれ以来僕は半分こが嫌いになった! B;まあ待て。ならば半分にした後、おぬしにどちらを取るか選ばせてやろう。これなら文句はあるまい? A;いやだ! B;なぜだ。 A;どうせ切り口だけを僕に見せて、僕が甘くない方を取るように誘導してくるに決まってる! B;まあ待て。ならば選んだ後に文句があれば、ワシのと取りかえっこしてやろう。 A;いやだ! B;なぜだ。 A;そんなことしたら、間接キスになるだろう! B;むう、確かに1人っ子で尚且つ修道場に行っていないワシとしても、間接キスは気持ち悪い。そうだ。そもそもメロンパンで考えるからいかんのだ。スイカならどうだ。スイカを半分こなら文句はないだろう。 A;いやだ! B;なぜだ。 A;どうせスイカの皮だけ出して半分ことか言うんだろう。 B;いや、そんなことする奴はおらんだろ。 A;あれは僕が10歳の時だった。兄貴が……。 B;わかったわかった。なら柿ならどうだ。柿なら皮が薄いから、そんなことは出来ん。 A;もちろん、種なし柿だろうな? B;無論だ。種のあるところばかりで半分こなんてことはせん。 A;よし、なら……。いや、やっぱり駄目だ。 B;なぜだ。 A;赤の他人と半分こなんて、なんか気持ち悪いだろ。 B;おぬし、友達少ないな。 A;なぜだ。 B;それはワシのセリフ……。まあよい。それより、おぬしまだ気付かんのか? A;何がだ? B;ワシは赤の他人などではない。ワシはお前の父だ。
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