第2章「言えない自分にサヨウナラ」

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玲子先生から説得された俺は階段を駆け上っていた。息を切らしても駆け上がる。俺の学校の階段は運動部がトレーニングとして登り降りする長い階段。運動部ですら音を上げるこの階段を俺は駆け上った。そして屋上に着いた。この扉の先にレイチェルがいる。息を一度整えて、俺は扉に手を掛けた。 「レイチェル!」 「…ユウトサン…」 「…ごめん。遅くなって」 「No!そんなコトないヨ。レイチェルは、ユウトサン必ず来ル信じテタネ!」 「ありがとう…」 「…ユウトサン、話しテくれマスカ?」 「…レイチェル…俺は…柏木勇斗は…」 俺はレイチェルに全てを話した。家族の事、妹の事、過去に好きになった人に騙された事、全てだ。レイチェルは黙って聞いてくれた。蒼い目は俺を優しく見つめてくれている。 「…俺は…こんな人間なんだ。レイチェル」 「………」 「これが…俺の話したかった事だよ…」 「ユウトサン…」 「…信じられないだろう?まさか初めて出来た友達が…こんな奴だって…」 「……」 「ごめん…手間取らせて…」 「…ユウトサン…!」 鞄を持って屋上から出ようとした俺をレイチェルが抱き止めた。 「レイ…チェル…?」 「ソンなコトないヨ…話しテくれて嬉シカッタネ…。ユウトサンは…妹サン守る為ニ耐エタ…。ワタシ…暴力的な人嫌いネ…。ユウトサンは優しい人デス。ダカラ…ソンなコト言わナイデ下サイ…」 「……」 「お願いダカラ…レイチェルのトモダチでいて下サイ…」 「レイチェ「ピリリ!ピリリ!ピリリ!」 なんてタイミングで携帯鳴るんだよ…。 「…ごめん、…志帆から?なんだよ…もしも『キモド変態兄貴!あんた今ドコにいんのよ!?』 またこれだ…。志帆は相変わらずピーピーうるさい。 「ドコって…学校だけど…志帆はまだ沖縄だろう?」 『家よ!沖縄での撮影が予定より早く終わって帰って来れたの!なのになんであんたがいないわけ!?超キモい!』 「いや…キモいの意味わかんねぇから…」 『とにかく!今から10秒で帰ってきなさいよ!?わかった?!』 「…今のガ妹サン?」 「あはは…!そうだよ」 「ユウトサン、一緒に帰りマショウ♪」 「そうだな!帰ろうか!」 過去を話した俺はレイチェルと共に帰った。そしてレイチェルを志帆に会わせる事に。
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