第2章「言えない自分にサヨウナラ」

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まだあたしがランドセルを背負っていた頃…いつも傍にいてくれた兄貴…。優しくて…温かくて…小さなあたしをその胸で抱き締めてくれていたのは兄貴だった…。…あたし…なんてバカなんだろう…この優しさを忘れてた…。この温もりを捨てようとしていたんだ…。 「ひっぐ…!ぐすっ…!お兄ちゃん…!お兄ちゃん…!」 「どうしたんだよ…志帆…ほら…泣くなって…!」 「う、うるさい…!…うっうぅ…!うぇえええんっ!」 「よしよし…ごめんな…」 「うん…!うん!」 久しぶりの兄貴の胸はあたしを優しく包んでくれた…。懐かしいな…この感じ…この温もり…。あたしにはまだ家族が…お兄ちゃんがいるんだ…。 俺はただただ泣くばかりの志帆を抱き締めた。俺の胸で涙を流しながら小刻みに震える志帆…。寂しかったんだろうな…携帯の画面には…俺が映っていた。俺は、玲子先生の家で風呂に入る前に志帆がどうしても心配になった。玲ちゃんに言って俺は家まで戻った。カギがないのにどうして入れたかって?随分前に、玄関横の鉢植えの下に合鍵を隠していたのを思い出したんだ。忘れてた?…まあそうゆう事にしとくかな…。何年か振りに俺は志帆と心を通わせたような気がする…。 …言えない自分にサヨウナラ…。
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