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孤児院の門を抜けてすぐネイムは口笛を吹いた。
その音は平地が広がるこの場でよく響き渡る。
「――――ィ」
微かな鳴き声が上空から聞こえてきた。
「こっちか」
しかしネイムは何故か鳴き声が聞こえた方向とは真逆の方向に顔を向けてしまった。
そして何か衝撃にでも備えるかのように腰を落として重心を低くする。
「――ピィィィ」
ネイムの背後から鳥にしては巨大な飛行物体が接近してきた。
「グフッ!」
飛行物体はネイムの頭めがけて体当たりし、直撃を受けたネイムはよろけた。
「とっ、と、と……!」
その場から三歩前のめりに進んだがどうにか体勢を整えて転ばずに済む。
「ピィ」
ネイムの頭に肩車のような形で乗っかった魔物――リンドブルムのサクラは何かをねだるようにネイムの髪をくわえる。
「はぁ……ちょっと待て」
サクラが落ちないように片手で支えながら背筋を伸ばし、もう片方の手でホルダーから干し肉を取り出す。
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