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干し肉を適当な大きさに千切り、サクラの口にまで運ぶ。
サクラはネイムの髪から口を放し、目の前の干し肉を食べた。
口笛を吹いたらやって来るという躾の成果だ。
いまだに体当たりしてくる癖は直らないが、ネイムは最早一種のバランス感覚を養う訓練だと考えた。
「さて、干し肉追加しておかないとな」
ネイムは手元にある小さな干し肉を見てそう呟いた。
竜の主食は肉が基本で、幼竜の内は特に多くあげなければいけない。
部屋での備蓄も底を尽き、今日中に新しいサクラの食糧を確保しておく必要がある。
「……銀行に行くか」
ネイムの貯金はモリア名義の口座で厳重に保管されている。
しかし本来は学生の細やかな資金を守るような生半可な設備ではない。
王族や貴族が特殊な資金や財産を保管するための物で、今まで一度も強盗が成功したことはない。
学生の資金は通常なら実家からの仕送りや、寮の管理人が保管するのが普通だが、ネイムは立場上この方が何かと都合がいい。
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