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頭にサクラを乗せたまま市街地に赴く。
首都の市街地は商会の本部も多く軒を並べており、中央広場には歴代国王を模した彫刻の立ち並ぶ噴水がある。
これがセレ・アルギムでも指折りの観光名所としても有名で、一目拝もうと地方からやってくる者もいる。
故に商店の多い【メリウス通り】は常に多くの人でごったがえっているのだ。
そんな中で頭の上に魔物の幼体を乗せながら歩く騎士見習いのネイムの姿のとてつもなく目立つものである。
「ピフッ」
サクラが露店で焼かれている肉の串焼きに興味を持ったようでそちらに顔を向ける。
「させるか」
前回の教訓を得て、今にも飛び出しそうになったサクラの足を固定する。
結果、サクラは飛ぶ事ができずに翼をはばたかせるのみで終わる。
その際、辺りの雑踏がピタリと止んだ。
人ごみの中でサクラが翼を拡げたので、周りにいた者たちは一様に目を奪われたのだ。
「ピィィィ……」
「駄目なモンは駄目だ」
不満そうに髪をくわえるサクラだが、ネイムは一切気にした様子も無く銀行へと向かう。
《…………》
何事も無かったかのようにその場を去っていくネイムを見送る。
「…………飛竜の幼体?」
「ワイバーンではないな」
屋台で串焼きを食べていた二人の男がサクラを観察する。
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