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アルギム銀行
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“本日臨時休業”
そう書かれた看板が銀行の鋼鉄製の扉の前に出ていた。
「……マジかよ」
ネイムは頭をガシガシと掻く。
ちなみにサクラを銀行に入れるわけにはいかないということで、近くの魔導灯の柱に紐で括り付けてきた。
魔導灯とは夜間でも通りを明るくするために設置された照明装置で、魔導機関の一種である。
「はぁ……困ったな」
今日中に肉を確保して置かないとサクラが暴れかねない。
幼いとはいえれっきとした竜
本気で暴れ出したらネイムの部屋中などすぐに廃墟と化す。
「…………それだけは避けたいな」
無理を承知でネイムは扉を叩く。
「おーい」
頑丈な扉ということで、多少力を込めて叩くネイム
ドラムを叩いたような音が通りに響いた。
通りにいた者たちは一様に扉を叩くネイムを見る。
「開けてくれ、どうしても金がいるんだ!」
ネイム自身さほど強く叩いてるつもりはないのだが、通常より強い身体能力をもつネイムが叩けば扉はかなり大きな音を発した。
客観的に見れば、已むに已まれぬ事情から必死にお金を求め、銀行の扉を叩く物乞いに見える。
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