20646人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな可哀想な目で見られていることに気づかずネイムは扉を叩き続ける。
「開けてくれー!」
そしてそのまま数度扉を叩く。
その時、カーテンで閉め切っていた窓が開き、少女が身を乗り出した。
「ガンガンガンガンとさっきからうるさーーーーい!!!」
どうやらネイムのノックは中ではかなりの騒音となっていたようだ。
少女はネイムを怒鳴ろうと大きく息を吸う。
「君は看板の字が読めな……って」
しかし、ネイムの顔を見て言葉が続かなくなった。
「あ、アルカ」
アルカ・N・ウィゴット
ネイムと唯一面識のある近衛騎士の一人である。
「へい――じゃなく……ネイム君?
どうしてここに……――はっ」
アルカはすぐにネイムが通りから注目されていることに気づく。
さらにアルカの顔を見て声を上げる者がいた。
近衛騎士は国民たちから尊敬される立場にあり、騎士たちの顔役でもある。
直に見れることなど滅多に無いため、このように国民に見られれば騒ぎが起きても不思議ではない。
「クッ」
アルカはすぐに窓から身を戻し、しっかりと鍵を閉め、カーテンで中が見えないようにする。
ネイムの後ろで惜しむ様な声がしたが、すぐに扉から施錠が開くような音がした。
「入って」
扉の隙間から声がする。
顔は出さないようにしているが間違いなくアルカである。
ネイムはアルカの言われるがまま銀行の中へと入っていく。
最初のコメントを投稿しよう!