再会&誘拐

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ゼノンは自身の肩に手を置く人物を見て石のように固まってしまう。 「モ、モリア様……?」 モリア・K・ライト この国の宰相を務め、事実上この国の政治の大半を担っている男である。 『ネイム君のことは私と陛下だけの秘密なんだ。 アルカさんには彼の迎えを頼んだだけで何も知らない。 そして君たちも彼のことは黙っていて欲しいんだ』 「し、しかし……」 ゼノンはネイムを一瞥する。 国王陛下と瓜二つの容姿で、モリアとの繋がりがある。 気にならない方が無理というものであろう。 モリアはゼノンの耳に口を寄せ、誰にも他の誰にも聞こえないような小声で喋る。 『近衛副隊長の座が欲しいのなら大人しく従え』 「っ、は、はい!」 返事を聞いてモリアは上機嫌そうな笑顔を浮かべる。 『それじゃあ君たちは作業を続けてくれ。 彼のことは私が』 「「「「はっ」」」」 近衛騎士の面々はモリアに一礼し、中断していた作業を再開する。 「何の騒ぎ……ですか?」 『敬語は結構ですよ。たった今結界を張りましたので、誰も我々の会話を聴けません』 それを聞くと「そうか」とネイムは疲れたように嘆息した。 まともな敬語は慣れていないようだ。 「で、これは何の騒ぎだよ?」 『実は昨晩、クルト・N・ビーマン大臣のご息女が誘拐されたのです』 ネイムは思わず耳を疑った。 「ク、クルトの娘が?!」 クルトというのは、ネイムがカリウスとして生活をしていた頃に家庭教師をしていた人物である。 旧知の人物の家族が誘拐されたと聞いてはネイムとしても気が気でない。
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