再会&誘拐

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驚いているネイムとは裏腹にモリアは状況を淡々と語る。 『犯人の要求は八千万メルと宝剣 本日の日没までに二つを用意しろという脅迫状が今朝届けられました。 また、騎士団を動かしたらご息女の命は無いということだそうです』 驚いていたネイムだが、深呼吸して落ち着く。 そしてモリアの言葉を聞いてひとまずは現状を理解した。 「そうか……その大金を用意するために銀行を閉鎖していたのか」 『状況は芳しくありませんね。 事態を公にしないように弟君が箝口令を布きましたが、時間の問題ですね。 このことが他の騎士に漏れたらすぐにご息女は殺害されてしまうでしょう』 「どういうことだ?」 『いまだ特定は出来ていませんが、場内に犯人の内通者がいるようです。 さらに【クラブ】と呼ばれる裏ギルドも絡んでいる疑いもあります。 プロの手口のために痕跡は見当たらず、どちらの捜索も進んでいません』 「……なるほど」 ネイムは右手を口元の持っていき、考えるような仕草をする。 「クルトの娘を探そうにも、近衛じゃ目立ちすぎて探すどころの騒ぎじゃない。 近衛も隠れながらやらなきゃいけないから効率が悪い。 かといって他の者に頼もうにも誰が内通者か分からない内は情報が漏れる可能性もある。 ……カリウスがクルトの娘を無傷で助け出すつもりなら、これは難しいな」 『しかし、それでも弟君は何の策も打ってないわけではありませんよ?』 モリアが不敵な笑みを見せると、ネイムは何かを察したように笑みを返した。 「だからお前がここに来たのか。 タイミングが良すぎると思ったよ」 『それは偶然に過ぎませんよ。 私も殿下がここにいるとは思いませんでしたからね』 「殿下はやめろよ。 ……で、犯人の目星は?」 モリアが近衛騎士たちには見えないように背後から紙を渡す。 『実は、目撃者が使用人に一人 その者の記憶を探り、犯人と思われる者の姿を紙に焼き付けました』 ネイムはその紙を受け取り、素早くポケットに詰め込んだ。 「分かった。 裏口から出てすぐに探す。 ……あと、今日中にサクラに食べさせる干し肉購入しといてくれないか?」 『御意』 モリアからの返事と同時に、二人の会話を遮断していた結界が解けた。
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