20638人が本棚に入れています
本棚に追加
/241ページ
―――――
アルギム城・隠し部屋
―――――
「――ペロ」
「……ん」
頬を湿った何かで撫でられたような感触に不快感を覚え、思わずうめき声をあげる。
「――――ピィ」
「…………うぅん」
続いて頭を何度も叩かれる。
失われていた意識が徐々に戻ってくる。
目を開くと、最初に視界に入ってきたのは桜色の毛並の良さそうな物体だった。
「…………サクラ?」
「ピィ!」
寝ぼけ眼でそうネイムが名前を呼ぶと、呼ばれたサクラは嬉しいのか犬みたいに尻尾を振った。
「………………俺、なんで」
いまいち状況を把握できず、ゆっくりと体を起こす。
「……俺の、部屋?」
部屋の内装に、ネイムは呆然としながら呟いた。
寮の部屋などではない。
かつてネイムがカリウスとして過ごした部屋である。
その部屋の内装を、ネイムは今でも鮮明に思い出すことができた。
今のこの部屋の内装は記憶にある物と酷似していたのである。
「……俺、死んだのか?」
「いや、ちゃんと生きているよ」
部屋の中から自分とは別の者の声がして驚いた。
声は暖炉の方から聞こえ、そこには一人の少年がいた。
それが誰であるのか、ネイムはすぐに分かった。
最初のコメントを投稿しよう!