君-2

11/11
964人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
 切なく、呟くように彼が漏らした言葉が私の胸を貫いて、ゆっくりと口から言葉を紡いだ。  「だって、アンタずっと、彼女……いたでしょ?」  「居たから何?」  「私なんて、友達の一人じゃなかったの?」  「お前が! いつまでたっても俺を見ないからだろ? ……妬いてくれないかって、馬鹿なことした。でもお前には伝わんなかったけど、な」    自嘲気味にそう呟きながらも、私からは目を逸らさない。  眼鏡越しの、彼の強い瞳から逃げられなくて、戸惑う気持ちが私の瞳を揺らす。  ふっと息を漏らして、彼は続けた。  「聞いたんだろ? あいつのこと」  「ど、して……」  「今日の幹事、俺のダチ。知ってたよ、アイツのことも」  「じゃあ、教えてくれたら……っ!!」  「言えるかよ! お前が、お前が3年想ってたやつが。大好きだった奴が、結婚したなんて、俺がお前に言えるわけないだろ!?」  はっきりと、さっき聞いたばかりの事実を、他人の口から告げられて、私は『あぁ、本当なんだ……』って、また胸が苦しくなった。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!