キミ-2

9/10

967人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
 *  「ただいま」  誰もいないのに、そう言いながら靴を脱いだ。  少し冷気の漂う廊下を歩き、明かりの灯るリビングに足を踏み入れた。  テレビも音楽も、何の音もしない、誰の気配もしないその空間に首を傾げる。    ―――?  オカシイな、と思ってぐるりと見回して目に入ったのは彼女。    「寝てろって言ったのに」  待っててくれたんだろう。  ソファーで力尽きたように背もたれに体重を乗せて寝ている。  心地よさそうなその表情に思わず表情も緩む。  やっぱり俺、きみが一番だ。  なんて。  今日は青春時代にトリップし過ぎたせいか、恥ずかしげもなくそんなことを思った。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

967人が本棚に入れています
本棚に追加