2、『死ノカウントダウン始マル』

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ああ、と渋谷は頷いた。 鑑識課において、渋谷よりも古い人間はいない。 まさにベテラン中のベテラン。 その渋谷が“嫌な予感がする”というのだ。 誠一も長年の経験から、この手のケースには何度か直面したことはある。 その経験と刑事としての勘が言っているのだ…。 これから、何かが始まる………と。 誠一は顔を上げ、ビニールシートの囲いがしてある一角から出た。 見れば、何の騒ぎかと散歩途中やら通勤途中の野次馬が河川敷に続々と集まってきていた。 この騒然としている河川敷に、春の少し冷たい柔らかな風が吹く。 その風に誠一の黒髪がふわりとなびいた。 「………一体、何が始まるっていうんだ。」
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