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青色のビニールシートをめくると、誠一も中へ入っていった。
中に入ると、土と草の匂いが充満していた。
先日雨が降ったせいか。ビニールシートの中はいつもより匂いが強い気がした。
腕章をつけた作業員が、しきりに外と中を出入りしている。
その作業員たちはカメラのフラッシュをたき、何枚も写真を収めたり、ピンセットでビニール袋に現場周辺に落ちているものを採取したり。
何かと慌ただしく動いていた。
その根気がいる作業は思っている以上に大変で、鑑識課の仕事の辛い部分だ。
その中に、キャップから白髪が覗く初老の男がいた。
誠一はその男に声をかける。
「お疲れ様です、渋谷さん。」
「………おお!桃太郎!お疲れさん!!」
その渋谷と呼ばれた初老の男は、誠一の顔を見るなりパッと明るい表情になった。
「ハハハ…現場で“桃太郎”は止めましょうよ。何気に恥ずかしいんですから。」
ひとしきり二人で冗談を言い合った。
渋谷と誠一は、随分顔馴染みのようだ。
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