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精製されていく社会について
真っすぐにのびるゆるいのぼり坂の道は、その果てで空に消えていました。
その道の両脇には銀杏並木が等間隔でならび、
それよりも遠い間隔でたっているのは、洒落た街路灯です。
その通りには白銀杏通り、しろぎんなんどおりという名がついていました。
道にそってカラフルな家屋の屋根がならび、どの家の庭もあふれんばかりに花や、木々が植えられ、通りに面した集合住宅はどれもシンプルに塗装され、大きな窓の多さが、明るい景観作りに一役かっています。スーパーの看板にディスカウントショップの賑わい。全面ガラス張りのカーショップ。今流行りのレストランまでその通りにはあるのです。
広い石畳みの歩道をあるいているのは、犬をつれたご婦人やカラフルなランドセルを背負った学校帰りの子供たち。夕刊を配りはじめた赤いバイクの新聞配達。どうやら午後3時を少し過ぎた頃のようです。
さて、この通りの1番美しい様相は、そんな午後3時ではありません。
この白銀杏通りの真ん中に、二車線道路の中央分離帯に沿って、真っすぐに並んで立っているもの。
それは万とも、千ともしれないごみ箱です。青い体に白いふたで統一されたごみ箱が、道路の真ん中を坂の果ての、晴れ渡ったあの空まで、まっすぐに続いているのです。
その青いごみ箱の中には色とりどりのビニール袋や紙箱がぎっしり詰め込まれ、あふれんばかりの山積みとなって、そうしてやっと、その上にベレー帽のように真っ白なふたを、斜めに可愛らしくかぶっているのです。
そのごみ箱のまわりには、入りきれなかった様々なものがプレゼントのように、下におかれています。
なんて美しい景色なのでしょうね。まるで、果てしなく静止し続ける長い長い列車のよう。街で1番美しい様相は、このごみ箱の列なのでした。
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