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選んだものは剣術だった。 曹真は朝夕鍛錬に励んだ。 気迫のこもった表情、というよりは決死の表情といったほうが正しいかもしれない。 得体の知れぬ焦燥に駆られながら、曹真は木剣を振り続けた。 時が流れた。 はじめのうちは一方的に叩かれるだけであったものが、一年が経つ頃には互角に打ち合えるまでになった。 さらに一年が過ぎるとわずかに勝ち越すようになった。 曹丕は負けると不機嫌になる。 「剣術だけできてなんになる」 そう言って、木剣を放り投げてどこかに行ってしまうのが常だった。 曹丕の捨てて行った木剣を拾いながら曹真は、ほっ、と息をつく。 実際、剣術以外では曹丕に歯が立たない曹真だったが、少しは自分に自信が持てるようになった。
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