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自転車を漕ぐ足に力を入れると、胸までの黒髪が風になびく。心地良い風に目を瞑ろうとした時、車のクラクションに振り向いた。
田舎に不似合いな外車のスポーツカー。東京のナンバープレートの車には、若いサングラスの男と派手な女が乗っていた。
尋ねるように声をかけられ自転車を止めると、サングラスの男が口を開く。
「あのさー、この辺に昔火事で焼けた屋敷跡があるって聞いたんだけど分かる?」
男の質問に雪乃は頷き、近くに見える山を指差した。
「それなら、あの山を少し上った所です。入り口に看板が出てるから、行けばすぐわかると思います」
「あそこか…ありがと」
男は礼を言い走り去る。雪乃は車を見送りながら、その山の中腹へ目を向けた。
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