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昔から町に伝わる悲恋の物語り。
屋敷跡には夫婦の墓が建てられ、いつしかそこを訪れたカップルは幸せになると噂されるようになった。
かつて屋敷があった辺りを、雪乃は遠い目で見つめる。
視界に広がる業火。
舞い落ちる雪と同じ白い椿が、炎に照らされ赤く染まる。
そして、止めどなく流れる深紅…
「…これで、やっと…」
胸を押さえていた雪乃は、漏れた独り言にハッとする。
「やだ、何浸ってんだろ。私、馬鹿みたい」
陶酔していた自分が恥ずかしくなり、自転車を漕いだ。
いつもと変わらない通学コース。暫く進み坂を上ると、周囲に誰もいないのを確認して自転車を草むらに隠すように置く。
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