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「貴様が佐久間か」
「・・・?」
三成の部屋から、借りている自室に戻る途中に、男に呼び掛けられる。すっとした切れ長の瞳が印象的な人だ、三成もだけど、この人も綺麗な顔だな・・・。
「大谷が使える駒を拾ったと言うから見に来たものの・・・やわそうな駒よ」
「な・・・!駒、だと」
聞き捨てならない。俺が駒?・・・確かに西軍という中では小さな存在かもしれないが、俺は武将だ、お館様に認めていただいたのだ!
「いかにも。某は武田の虎が一人、佐久間鈴成。・・・虎の爪はいかなる者にも向き、虎の牙はいかなる者をも屠ると知れ」
刀に手をやり、臨戦体制をとる。
「ふん、脳みそまで筋肉のようだな」
「そこまで愚弄するかッ」
「貴様は馬鹿だが・・・殿中で丸腰相手に騒ぎを起こすほどではなかろう?その手を離すとよいわ」
そういえば、相手は帯刀していない。・・・今騒ぎを起こしたら、武田の名に傷が着く。俺は刀に掛けていた手を離した。
「それでいい。・・・戦場では良き我が盾となれ」
「待て、貴様の名は!」
立ち去ろうとする奴に呼び掛けると、奴は面倒そうに振り返った。
「わざわざ駒に名乗る棋士がどこにいる?」
「ッ」
どこまで人を馬鹿にすれば気が済むのか。俺は必死に右手を抑える。
「ふん、・・・我が名は毛利元就。貴様を操る棋士よ、覚えておくがいいわ」
「毛利、元就・・・」
聞いたことがある。詭計智将、毛利元就・・・名がある武将だ。彼の戦法を見、勉強し戦に臨んだこともあった。
(あの様な人だったのか)
がっかりしたような気もすれば・・・もっと彼について知りたい、という気もした。
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