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「我が布陣を乱すでないわ!」
「申し訳ございません元就様!」
・・・朝から騒がしいな。外が騒がしいので戸から顔を覗かせると、居たのは眉を吊り上げた毛利元就とその部下であろう兵達。
「貴様等駒は、我が策通り動くだけでよいのだ」
「しかし・・・」
「口答えをするな!」
毛利は頭に血が昇っているようだ、部下をはたき?で叩いている。・・・結構痛そうだな、止めておくか・・・?
「止めておけ、殿中だぞ?」
「ッ、貴様・・・」
「それに、俺はともかく・・・自らの兵を駒だなんて言うな」
毛利の腕を掴み、止める。意外と細い腕だ、頑張ったら俺の力でも折れそうな・・・いや、問題はそこではない。
「貴様にとやかく言われる筋合いはないわ」
「可哀相でしようがなかったんだ。そいつらとお前がな」
「我がだと!」
切れ長な瞳と見つめ合う、いや・・・見つめ合うというよりは睨み合う、が正しいか。
「我の何が可哀相だと言うのだ、戯れ事を吐かすでない!」
「お前、そんな風では友人も居ないだろうに」
「そんなもの、我には要らぬ!」
「その思考が可哀相なんだ」
毛利の瞳が揺れる。毛利はそんなので、淋しくないのだろうか?
「誰かと笑いあい、共に過ごすのは良いものだぞ、毛利元就」
「煩い・・・!言いたいことはそれだけか!」
「・・・あぁ」
ぱ、と毛利の手を離すと、毛利は俺にむけてその手を振り上げたが・・・それを振り下ろす事はなかった。
「なら去れ、顔を見せるな」
「・・・毛利」
つんとそっぽを向かれてしまった為、それ以上会話をすることは不可能だった。
・・・俺は黙って、その場を去った。
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