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「佐久間殿!!」
「幸村か」
「この度は築城、おめでとうございまする!」
「ありがとう」
お館様の元を離れ、城を築いた。
この所自分のことばかりでずっとここにもこれていなかったが、やっと仕事も落ち着いて、故郷である信州にやってくることができた。
「幸村、別に畏まらなくていいぞ?昔みたいに鈴成って呼んでくれていい」
「しかし、佐久間殿は最早一国の主であります故・・・」
「なんか淋しいな」
流れて行く時の中で、変わらないものなんてない。
俺と彼の関係もその一つのようだ。
「佐久間の旦那には俺が居るじゃない」
「佐助・・・そうだな、今夜は慰めてくれるか?」
「俺様でよければいつでも」
「な、二人とも破廉恥であるッ!!」
突然現れた佐助と共に幸村をからかうのはいつものことだ。
・・・あぁ、なぜだか懐かしいな。
「旦那も悔しいなら頑張んなよねー」
「某はお前の様に軽くはない!」
「そりゃないぜ旦那ー」
二人がじゃれあっているのを見ると安心する。
・・・俺もその中の一人だったのに、俺も大人になってしまったのだなぁ・・・。
「そうだ。佐助、お館様は?」
「ん?いらっしゃるよ」
「そうか、なら少しお目通りしてくる」
ずっと二人を見ていたいけど、まずはお館様に挨拶しないとな。
そのために来たんだし。
「佐久間殿、お目通りが終わった後は・・・」
「空いてるが。久しぶりに手合わせするか?」
「!!よろしいのですか!」
「今日は休みだからな。付き合ってくれ」
「某でよろしければいつでも!!」
目を輝かせる幸村を見ると、年月が経ってもまだまだ子供だなぁ、と感じる。
・・・まぁまだ子供か。
「では行ってくる。佐助、茶と団子は頼んだぞ」
「はいはい、鈴成の旦那の仰せの通りに」
佐助に軽く手を振ると、佐助が片目を閉じて合図を送ってきた。幸村を一瞥すると、幸村の挨拶は会釈だった。・・・律儀な奴だ。
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