出逢い

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「えーそれでは自己紹介を始めてもらいます」 汗ばむ手。 緊張で震える足。 …鳴り止まない心臓の音。 私の大嫌いな時間だ。 「次、…次!」 「はいっ」 一気に注目を浴びる。 「塚原紀子です。変な名前なんで覚えやすいと思うんですが…」 すべてを言い終わった後は、緊張も無くなり汗も引いていた。 「ねぇねぇ」 「え?」 「私、筒井奏絵、よろしく」 「よろしくおねがいします」 これが、奏絵との出逢いだった。 「…塚原さん」 「紀子で…いいよ」 「あそこにいる彼。坂井拓海くんって、本当は2年生なんだって」 「…坂井?」 顔を向けて見ると、たしかに今朝の『坂井くん』だった。 「…拓海っていうんだ」 「知り合い?…なんで2年になれなかったかは、誰も知らないんだってさ」 「知らない…?」 写真部の坂井くん。 本当は2年生だったなんて。 だからバスケ部と仲良しなのか。 「今日はもう解散だ。気をつけて帰れよ」 いつのまにか長いHRも終わっていた。 「紀子」 「ん?」 「メアド、登録しといて」 「…ありがとう!」 一枚の紙には、奏絵のアドレスが書いてあった。 「じゃ、ばいばい」 奏絵は家に。 私は…寄る場所があった。 .
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