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「ぜえ・・・ぜえ・・・なんとか逃げきれたね。大丈夫?」
青年の言葉に、如月は頷いた。
「正直、もうなにがなんだか・・・」
先程の銃声がまだ鼓膜に残っていた。
如月は思わずその場にペタンと座りこんでしまった。
手はまだ震えていて、心臓はバクバク鳴っている。体がおかしくなりそうだった。
「しばらく、ここで休もうか。僕も、このとおりなんだ」
そう言って差し出した青年の右手も同じように震えていた。
「同じだね、僕達」
正直、助けてくれた時はどこかのヒーローかと思ったが、そんなことはないようだ。
如月は苦笑いをして頷いた。
この人物、相当お人好しだな、と如月は思った。それだけ怖がったのにあれだけのことをするからだ。
「ねえ、聞いていい?」
「ん、なに?」
「君、名前は?」
「え?」
「名前、聞いてるの」
今起きていることの説明をされると思ったのだろう、青年は不意を突かれたような表情を見せた。
「神村ヒカル、って言うんだ。よろしくね」
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