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あれから私たちは家に帰り、私は母にこっぴどく叱られた。
(まぁ…当たり前なんだけどね…)
夜から仕事が入ってた兄だったが、どうやらマネージャーさんの計らいでなんとかなったらしい。
一体どうやったんだか…
泣き疲れたらしく、家に着いてからすぐに寝入ってしまったらしい。
目覚めた時にはもう兄の姿はなかった。
―ちゃんと謝れなかったな…
ふと目をしたにやると、自分の手元に何かがあるのに気が付いた。
『これ…』
私はそれを手に取った。手編みの手袋だった。
その中から、一枚の紙が入っていて、私はそれを広げてみた。
" 親愛なる
泣き虫夏奈様
風邪は引いていませんか?
また泣いていませんか?
君が元気でいてくれないと、お兄さんが悲しんでしまいます。どうか元気で、笑顔でいてください。
手袋を編みました。寒い日が続くので使ってください。
そして、もしまた悩み事ができたら、すぐサンタさんに電話しなさい。"
『今時のサンタってずいぶんハイテクなのね…』
思わず笑ってしまった。
まだ手紙には続きがあった。
" あともう一つプレゼントを入れておきました。
気に入るかはどうかわかりませんが、サンタさん、心を込めて作りました。
どうか持っていてください。辛い事があったらこれを見て思い出してください。
君は一人ぼっちではありません。
サンタさんはいつだって君を見守っています "
『やっぱり、お兄ちゃんはお兄ちゃんだね…』
どうやら、まだ好きなものは完全に捨ててはいなかったようだ。
手袋の中にあったもう一つの、一つ一つ丹念にビーズで作られたストラップを握りしめて、私はまた泣いた。
『ごめんなさい』と、今度は『ありがとう』も込めて。
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